March 30, 2007
取調室 自己中心罪編
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目が覚めるとそこは留置場。昨日は何をしたんだ?何でここにいるんだ?
頑丈な鉄格子。ここは明らかに監禁する為の部屋だ。
こんな部屋に閉じ込められると言う事は、何かの罪の疑いがかけられているって事ぐらい分かる。
何故だ。ナニユエにだ??
しばらく寝ぼけた頭に血液を循環させアイドリング。
ピコンピコンと脳みその各部所にに動作ランプが灯りはじめる。
記憶装置も暖まり始め徐々に記憶が蘇ってくる。
そして命令通りにそれらの場面をスクリーンに映写していく訳だが・・・。
待てよ。。。
眉間にシワ寄せ、目を細め、親指と人差し指の間にアゴを乗せる。
うーん、マンダム。
何か心にしこりがある。悪性腫瘍だ。心の癌。
癌!?!
「先生、僕は死ぬんですか??」
驚きそのままに僕は、癌=死と思ってしまう昔の人間のような質問をする。
「死にはしないよ。心の癌だから命に関わるものじゃない。」
「治るんですね??」
死ぬと思った後には治る。この極端さが僕の特性。
とまあこんなやり取りをとっさに浮かべ、そのしこりの原因を探る。
あはぁー。思い出した。
人を傷つけたんだね。
っつー事は。
なるへそ。←古典ギャグ
ここにいる理由。
頭に浮かび始めた昨日の記憶と共に、心のしこりがここにいる理由を認識させていく。
一日二回出るウンコが出口付近をノックする。
そのノックが次第に激しくなってくる。
そりゃそうだ。さっき食べたのは昼食。昼を過ぎている事は確かな訳で。
だいたい朝晩二回のペース。それが昼過ぎ。
でももう少しの辛抱だ。
ウンコは取調べの途中に有効に活用せねば。
今してしまうと後々嘘をついて「ウンコいかせて下さい」と言っても、
「さっきしたやろ」と一喝されるだけだ。
ここはグッと我慢して上手にガスを抜き、タンクの容量を確保するのだ。
ウンコウンコと頭の中でこだまする中、一瞬僕はある事を思い浮かべた。
おならを我慢し続けると口から臭いが漏れる事があると言う話。
「使える」
不適な笑みを浮かべ僕はおなら我慢も決意した。
その時目の前に捜査官が現れ僕の名を呼ぶ。
「オノユウスケ」
?マークを2、30個並べた後、
「オノヒロユキです」と訂正してやる。
心の中はこうだ。
「ヒロユキって読むんや!!ボケ!!カス!!お前の母ちゃんデベソ!!」
母ちゃんがデベソで何が悪いんだ?
そうね。母ちゃんデベソがいじめのネタだった平和な日本はどこへ行ってしまったんだ。
僕は現代社会の荒波にもまれグレてきたひとり。
もう学校や家には・・・帰りたくないー 〜 の世代だ。オザキですよ。オザキ!!
話を戻し。。。よく間違えられる。
石原裕次郎のお陰で『裕』と言う字を『ユウ』ととっさに呼んでしまう人が多い。
内田裕也とかね。
でもこの捜査官は頭の悪そうな風貌だ。マユゲも太い。間違いない。
コイツの頭の辞書には『裕』の読みは『ユウ』しかない。
今さっきの僕の訂正で「ヒロユキかあ・・・」と新たに読みを追加したタチ。
そうだ。今日コイツの呼び名はアホロ。アホなロボ。決まりだ。
アホロに連れられ取調室に入る。
この湿った空気。相変わらずだ。
プロレスラーがとっさに投げつけたりできる折りたたみの椅子。
使い古され表面のニスがはがれ所々にタバコの焼け跡が残る机。
その上に座りが悪くちょっと安定感のない島木譲二愛用のぺこぺこの灰皿。
今日は何の容疑だ?
目の前に無造作に置かれたノート。ちょっと角が取れて使い込んだ感が出ているノート。
『容疑者 嶌田裕一』
ゲロゲーロ!!僕のじゃない。
アホロが慌ててそのノートを手に取り部屋を出る。
嶌田裕一!?!アイツも容疑が課せられていたのか。
アイツの容疑は何だろう?何をしでかしてんだ?
僕程の多くの容疑は課せられているはずはない。
戻ってきたアホロが臭い息を吐きながら
「始めますか?」
僕に聞くな。勝手に始めてくれ。っーか歯磨きしてこい。
「昨日何してた?またアレか?ナニか?酔いどれだったんだろ?」
右眉を吊り上げ鋭く睨んで肯定する。アレはしていない。ナニも使ってない。でも酔いどれだった。
「オマエが好き勝手してた事は調べがついてんだ。一緒にいた人達を覚えてるか?ひとりずつ名前を言ってみろ。」
時間を遡り人々の顔を思い浮かべる。そしてその名を指折り数えながら答えて言った。
その途中、僕は声を詰まらせる。分かった。僕の容疑。
いつものようにノートを反対側から覗き込む。
『容疑 自己中心罪』
そう書かれた行の下。
たった今思い出した事。そしてその時間が記されている。
僕はうなだれながら首を左右に振り大きな反省に溜息をつきながら
「分かっています」
小声で呟いたその言葉に捜査官も後を追うように大きく息を吐いた。
「分かってるよな?」
念のための確認をしたかったんだよといった口ぶり。
「話してしまいな。楽になるぞ。」
太陽にほえたくなってくる。石原軍団の一員になった気分。
そんなセリフでペラペラ話し出すヤツの気が知れない。
とか言いつつペラペラ話し出す。まんまと手に乗った。
楽になれるなら話しますよ。
そこから僕は延々と昨日の出来事の一部始終を語り続けた。
どんな気分でどんな考えでどんな言動行動で。そのすべてを話した。
話し終えると僕は、自分の罪の意識の高まりにここにいる事の意味を再び認識させられる。
自分のとった行動。ただただ自分の思うがままに思いを口にして行動して。
相手の気持ちを考えずにそこにある感情をさらけ出してしまった故に相手を悲しませた僕自身の行動に後悔している。
これが自己中心と言う、主張することを自分勝手に正当化し自分が進む道を切り開こうとする推進力の強さを感じさせるある意味行きていく上で必要でもある考え方。ただそれによって対相手的に、その人に負担を与えてしまっている悪い部分、この罪の深さを思い知っていた。
「何て事を・・・」
うつむき加減に呟き、涙腺が緩む。
こぼれ落ちる涙がデニムの太ももに雨の如く降り注ぐ。
あっという間にその涙の粒の点が繋がり、その辺り一面を濡らしてゆく。
まるで洗濯した後に乾かさずに履いたような冷たい感触が伝わってくる。
明らかに水道の水ではない動物性の水分。
その水分には人への思いやりを忘れた愚かな生き物の情が溶け込んでいた。
その濡れた場所、その場所の方々から「ごめんなさい」と叫び声が折り重なって聞こえてくるみたいだった。
しばらく僕は声を詰まらせ涙を流す。
その間、頭の中が切なさで満たされゆく。
「やっちまった」
そう小さく呟き顔を上げる。
目の前にいる捜査官は鼻くそをかっ穿じっている。
指先の鼻くそをデコピンするときの動作で投げ飛ばし一言。
「気が済んだか?」
カチコーン!!
ぷっつんしちゃったぞ。おい。
捜査官の胸ぐらをつかみ「テメーに分かんのかよ」とメンチをきって唾飛ばしながら吐き捨てる。
あたっていた。その時の僕は何かにあたる以外この感情を正常な状態に戻す方法が見つからなかった。とても責任を取れる行動でないと分かっていたとしても。
気が付くと、警備員に両腕をつかまれ、数人の捜査官に「落ち着け!!」とか「暴れてどうする?」とか、感情の高ぶった動物には全くと言っていい程効果のないセリフに余計に燃え上がろうとする怒りの衝動を覚えつつ、ふと自分の立場が頭をよぎる。
僕は容疑者なんだ。
抑制作用のあるホルモンをできる限り、脳みそに送り込みながら徐々に冷静さを取り戻していく。
行きどころのない、自分を責めるしかない、悔しい気持ちが一連の衝動的な行動となっていったのだ。
今は落ち着いている。むしろまた、その悔しい感情が自分の内側へと矛先を変え、心をサンドバックのように連打で叩きのめしている。ノックアウト寸前。このまま責め続けると立ち上がれなくなる程。
悔しさが空っぽになった涙を絞り出す。
ゆっくり頬を伝う涙はゆっくり僕の感情を慰め、熱くなっていた部分を冷ましていった。
「すみませんでした」
申し訳ない気持ちをいっぱい込めてはっきりとした口調で。
でも、本当に謝りたいのはここにいる捜査官に対してじゃない。
僕が傷つけた人々へ。
一度しか口にしなかったこの言葉を心の中で連呼している。
届いてくれ。伝わってくれ。そう願って心で叫んでいる。
日が暮れはじめ、僕の取調べは佳境に入る。
後は、容疑を固める為の確認のような問いかけで、質問形式で淡々と事を進められる。
そして調書が作成され検察へ。
僕の容疑は恐らく確定されるだろう。
僕に無罪を主張する余地はない。
大切な事を忘れていた。
ウンコだ。
僕の腸は膨張を続け、下腹部は膨らみを増しその中味の重さが見て取れる。
「すいません」
今度は謝る意味ではなく言葉を発した。
「トイレ行ってきてもいいですか」
捜査官は、「ならば っと・・・」と腕時計を覗き込みながら、金曜日の最後の講義を受け持ち、週末の混み合いを避けるため早めにディナーの予約を入れていて速攻で車に乗り込みお気に入りの大学院生と食事会へなんて不埒な考えをしている中年教授のように目の前の書類を片付けながら「この辺で・・・」とまるで僕のウンコで時間を切り上げて終わってやるよといった言い回しでこの取調べを終わらせる。
その雰囲気を察して、飛び出しそうなウンコが発射準備を整え始める。
そう。捜査官の胸ぐらをつかんだ時の僕の息はきっとウンコ臭が混じっていたのだろう。
さすがの臭いに捜査官も参ってしまったのだろう。
普通ならブタ箱行きだ。
ってことは、今日の作戦は成功したんだな。
若干出口付近に停滞していた濃縮された屁を部屋を出る間際に発射してやった。
これで今日の任務は完了だ。
ウンコしたらお腹がすいてきた。
ぼくはその帰り道。
チャンポンと皿うどん、餃子二人前にチャーハン。定番メニューをひとりで注文し、戸惑いながら「お一人でお食べになるんですか??」と言いたげに注文確認するお姉さんに「出来たもんからどんどん持ってきて下さい」と言葉添えて注文確認の途中のお姉さんを厨房へ向かわせる。
あっという間に全部平らげ僕は職場に向かう。
そして今宵も何かをしでかそうと企んでいる。
僕の前科は勲章だ。これからも幾度あそこに行く事だろう。カタカナで書くとアソコだ。
あそことは取調室。アソコとは・・・。
さ、昨日の反省を背負って僕はどんな夜を過ごすのだろう。
今宵誰と過ごすのだろう。
そうだ、『嶌田裕一』。アイツは釈放されたのか?
しごかれたのか?って言うかアイツの名前も『ユウ』じゃん!!みんな『ユウ』かよー!!
僕らはいつもこうだ。いっつも。
反省を繰り返しながらも、ひるむ事なくまた歩き始める。
あの使い古されたノートがそれをうかがわせてくれる。
僕らのノートはもうすぐ二冊目に繰り越される。
数々の容疑を課せられつつ。今日も生きゆくのだ。
でもね。。。
今僕はとても重たい心境でここにいる。
まだ心のしこりが残っているのだ。
何かむずがゆく落ち着かない。
いつになったら無くなるか。
生涯背負っていかなければいけないものなのか。
あー。うー。ふぅー。しこりがうずく度溜息が漏れる。
自己中心。
そんな自分が嫌になっている。
今日は大人しくしておこう。。。。
投稿者 litfie : March 30, 2007 09:41 PM