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August 11, 2006

心の引き出し

目が覚めると僕は、何故か床の上。
乱れた服装で横たわっていた。
一瞬「ここはどこ?」と自分を疑がった。

昨夜の記憶は、どこかで途切れていた。
目を覚ましたといっても、スッキリしたものはなかった。

とてつもなく重い何かに押しつぶされているかのように僕の頭は重力に押さえ込まれる。
そしてミラーボールが廻るようにゆっくりと回転し、妖艶な光を放っているようだった。

そう、僕の頭の中から何かが放たれている。
どこか如何わしい何かが。

いつの日か見た女性の裸が目の前に蘇る。
誰もいない海辺の木陰で裸になっていた女性を。

思い出した。
ほんの一瞬の間に。

「ごめんなさい」
その時僕は心の中で呟いた。

いつかの夏の日の事。

いつものように海辺を歩いていた。
休日でもないのに海辺は人に溢れていた。

日差しが照り返す砂浜はそこに居る人々に服を脱ぎ捨てるように導いているようだった。
僕も裸にはなったものの、水に入る気にもなれず、人の多さに滅入ってしまい帰路につく。

そこで目にした光景。人気のない海辺の林道を帰路につく僕が目にした光景。

恥じらいもなく全ての纏を脱ぎ捨て裸になった女性がそこにいた。

ただただ救いだったのは一瞬「ハッ」とした表情をしながらも笑みを浮かべてくれたこと。

「ごめんなさい」
心で思っていながらも僕は自然に笑みを返した。

官能的なものではなく、むしろ自然な反応だった。
僕が通り過ぎる間も何もなかったかのようにゆっくりと水着に着替え、時折僕に視線を投げ掛ける。
そしてその横を通り過ぎる瞬間、一言声をかけてくれた。
それは単純な挨拶の言葉だったけれど、平常な僕の心を一瞬乱していく。
その瞬間、ほんの目の前に立ちはだかる女性の肌が目に入ってきたからだ。

しかしながらその時の無垢な表情と体は、その林の緑に逆らう事なく同調していた。
その裸体は異性を挑発する一種の刺激を物のたりとも発していなかった。
勿論、僕は欲情を押し殺す必要もなく通り過ぎていった。
ちょっとお話の続きがあるけど、それはいつの日か短編小説にして書き綴る事にしよう。
これ以上書くとエロスと思われてしまう。。。

その後、いつものように車を飛ばし家に帰りシャワーを浴びる。
さっき目にしたある意味、非日常な光景を思い浮かべる事もなく。

今になって、そんな出来事が思い浮かんでくる。

人は、たくさんの記憶を心に収め、その扉を閉める。
その多くは、引き出される事なく刺激などに誘発される事がない限り心に留めている。
それらは時に、苦悩に苛まれたその隙に飛び出してきたりするものだったり。

よく言う。
死ぬ間際に生きてきた出来事のありとあらゆるものが頭を巡る。
決して消える事なく目にした光景、思いが、心に焼き付いている証拠だ。

僕は、死ぬ間際ではないがこの異様な昏睡の余韻の中、それに似た状況にいるのだろう。

そして今、頭の上に重くのしかかっている物がふっと取り除かれる。

こうしてキーボードに向かい、心の中を表現して綴る。

こんな文面を誰が平常なものとして捉えてくれるのだろう。

きっと、ヨコシマなものと受け取られるだろう。
違う。
僕が言いたいのは女性の裸を見た事じゃない。
まあ、それは一種の妄想というか、如何わしいものかもしれないが、言いたいのはそれじゃない。

普段目にしたり、それに無意味な反応をしたとしても、自分が生きている限り何かを感じて思い留めているという事。

気付かないだけで、僕らは常に何かに出会い感じている。

僕は、これを機に様々な記憶を懐古する。
そこには、多くの人の喜びの笑顔、そして苦痛の表情が思い浮かぶ。

そうしているうちに、とてつもなく人恋しくなってくる。
一人では居られなくなる。

「ありがとう」「ごめんなさい」

僕は繰り返していた。

「みんなも時に僕を恋しく思ったり、懐かしく思ってくれ。」
そう心で呟いた。

みんなの心にしまい込んである思い出。
ふと、心の引き出し開けてみるのもいいものかも。

ある夏の日の光景が今を導いてくれた。

そして、その女性の体が再び僕の頭を押さえつけていく。。。
やっぱりこれはヨコシマなデイドリームだ。

しゃれ抜きで重い。
何か食べよう。。。。。。

投稿者 litfie : August 11, 2006 11:29 AM

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